コラム

全般性不安障害でお悩みの方へ:尽きない不安の連鎖を断ち切り、穏やかな日々へ

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毎日の生活の中で、「なんだか漠然と不安…」「常に何かを心配している…」と感じることはありませんか? ただ心配しているだけなら良いのですが、もしその尽きることない不安と心配のために、身体症状や精神症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたしているとしたら、それは**全般性不安障害(GAD; Generalized Anxiety Disorder)**かもしれません。

全般性不安障害(以前は「不安神経症」とも呼ばれていました)は、日常生活のあらゆることに対して、過剰でコントロールできない不安や心配を慢性的に持ち続ける病気です。この漠然とした全体的な不安は**「浮動性不安」**と呼ばれ、全般性不安障害の症状の特徴です。

「自分は心配性な性格だから」「ちょっと神経質なだけ」と周囲から評されることが多いものの、ご本人は不安をどうしても拭えない状態にあり、またそれにより長く症状に悩まされます。しかし、適切な治療を受けなければ、症状が悪化し、うつ病やパニック障害、社交不安障害などを併発する可能性も高まります。

当カウンセリングルームでは、このような慢性的な不安によって苦しんでいる方が、その連鎖を断ち切り、穏やかな日々を取り戻せるようサポートいたします。

「全般性不安障害」とは?:漠然とした不安が日常を覆う病気

全般性不安障害(GAD)は不安障害の一つで、日常生活中で強い心の不安が生じ、さまざまな心身の症状が続くことで日常生活に支障をきたしている状態です。漠然とした不安感や心配が半年以上持続し、精神的・身体的な症状が現れている精神疾患とされています。ICD(国際疾病分類)では全般性不安障害と規定されています。

パニック障害は急性かつ突発的に起こる不安発作が主症状ですが、全般性不安障害では慢性的な不安症状が長く続くことが特徴です。家庭、会社、学校、近所づきあいといった身近なことから、地震などの天災、海外での戦争など、自分に直接関係のないことまで、あらゆるものが不安を覚える対象になります。

「全くあり得ないようなことを心配しているのならば周りも病気と思うでしょうが、不安が日常生活に散らばっていることから、「他の人よりも心配性」や「ちょっと神経質」と思い込んでしまい、病的な不安とは受け取られないのです。患者さん自身も、「自分は心配性な性格」と思っていることも少なくありません。

全般性不安障害の発病には、もともと神経質で不安を持ちやすい性格の人に多く見られ、何らかのショッキングな出来事、心配事、悩み、ストレスなど、精神的なものが原因と思われることもありますが、全くない(あるいは気づかない)こともあります。身体的な要因では、過労、睡眠不足などがきっかけで発症することもあります。多くのケースでは、日常での様々なストレスを背景にして生活しているうちに、いつのまにか発症していることが見受けられます。

全般性不安障害は女性に多く、男性の倍以上と言われ、日本での有病率は1.2%と言われています。


全般性不安障害の主な症状:尽きない心配が心身に現れる

全般性不安障害では、強すぎる不安や心配がコントロールできなくなり、心と体が悪循環に陥って様々な症状として現れてしまいます。

精神症状:常に付きまとう不安と集中力の低下

  • 持続的かつ慢性的な不安、緊張、落ち着きのなさ、焦燥、過敏
  • 些細なことで不安になる、取り越し苦労が多い
  • イライラして怒りっぽい
  • 集中力の低下、記憶力の悪さ
  • 根気がなく疲れやすい
  • 悲観的になり、人に会うのが煩わしい
  • 寝つきが悪く、途中で目が覚めやすい(不眠)

これらの精神症状は、診断基準では6カ月以上持続し、慢性化することが特徴です。

身体症状:自律神経の乱れによる多彩な不調(不定愁訴)

強い不安や心配が自律神経に悪影響を及ぼし、身体にもさまざまな症状が現れます。多くの患者さんは身体面での症状を強く訴え、どこか体に異常があるのではないかと考え、あちこちの病院で診察や検査を受けますが、特に異常を指摘されずに慢性的に経過することが見られます。

  • 頭痛、頭重感、頭の圧迫感、緊張感、しびれ感
  • 筋肉の緊張、首や肩のこり、震え
  • 動悸、冷や汗などの自律神経症状、ほてり、手足の冷えや熱感
  • めまい、ふらつき、頭がゆれる感じ
  • 呼吸苦、のどの不快感
  • 頻尿、便秘や下痢
  • 易疲労感(疲れやすい)
  • そわそわ感
  • 全身に脈拍を感じる

全般性不安障害のチェックシート

ここ6ヶ月間のご自身の状態を振り返ってみましょう。

  1. ここ6ヶ月、仕事や学校など身の回りのことについて、過剰な不安を感じる日の方が感じない日より多いですか?
    • はい/いいえ
  2. その不安は自分でコントロールできないと感じていますか?
    • はい/いいえ
  3. その不安によってどんな症状が起こりますか?(以下の中から全てチェックしてください)
    • □ 不安によって落ち着きが無くなったり、緊張したりする
    • □ 不安によって集中力がなくなる
    • □ 不安によってイライラする
    • □ 不安によって疲れやすい
    • □ 不安によって筋肉が緊張する
    • □ 不安によって眠れなくなる
  4. どういうことに対して不安を感じますか?(以下の中から全てチェックしてください)
    • □ パニック発作が起こること
    • □ 人前で恥ずかしい思いをすること
    • □ 汚染されること
    • □ 家族から離れること
    • □ 体重が増えること
    • □ 体力がなくなっていくこと
    • □ 病気のこと
    • □ (その他、日常生活のあらゆること)
  5. その不安自体、または3でチェックした症状によって、日常生活に支障をきたしていますか?
    • はい/いいえ

うつ病・心配性との違いは?:適切な理解が回復への第一歩

全般性不安障害は、「うつ病」と病態が似ていたり、周囲の人から「心配性」と指摘されたりすることが少なくありません。しかし、これらは明確に区別されます。

全般性不安障害とうつ病の違い

全般性不安障害は、特定の状況ではなく、日常生活全般において強い不安を感じます。そしてその不安を患者さんご本人がコントロールすることはできず、毎日続き、また機能障害も伴います。このような点で、うつ病などの他の精神疾患とは明確に異なります。うつ病では、気分の落ち込みや何事にも興味が持てなくなることが主な症状となります。

ただし、全般性不安障害の人がうつ病を合併する、うつ病の人が全般性不安障害を合併するといったケースは少なくありません。全般性不安障害は発病すると、うつ病、パニック障害、社会不安障害などを併発する可能性が高くなるといわれておりますので、症状が現れている場合は、早めに受診することをお勧めします。

全般性不安障害と心配性の違い

「心配性」とは、その人がもともと持っている気質のことで、病気や障害ではありません。一方で全般性不安障害は病気であり、その点で両者は明確に区別されます。どこにその境界があるかというと、「日常生活に支障をきたしているかどうか」という点が挙げられます。

全般性不安障害の場合には、心配で心配で何もできなくなる、引きこもってしまうといったことが起こり、生活の質が著しく低下します。


全般性不安障害の診断方法:身体疾患の除外が重要

全般性不安障害の診断は、ICD-10やDSM-5(アメリカ精神医学会が作成した診断基準)に則って行われます。先に述べた症状と経過の特徴からなされ、検査で特別な異常はみられません。

診断においては、原因になるような身体疾患がないことが主な条件です。身体疾患を除外するために、血液、心電図、場合によっては脳波検査などの内科的な検査を行い、心血管系疾患、呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症、低血糖、薬物中毒、てんかんなどを除外して診断をつけます。心理検査で自己記入式の質問紙でその傾向があるかどうかを調べることもあります。

DSM-5による診断基準(抜粋)

  1. 仕事や学業などの活動やさまざまな出来事について、抑えるのが難しいと感じる強い不安感や心配が少なくとも6ヶ月以上続いている状態。
    また、以下の症状のうち3つ以上を伴っている(過去6ヶ月間、症状がある日がない日よりも多い):
    • 落ち着きがない、緊張感、神経の高ぶり
    • 疲れやすい
    • 集中力が続かない
    • すぐに怒ってしまう(イライラ)
    • 筋肉が緊張してしまう
    • 睡眠障害(入眠困難、熟睡できないなど)がある
  2. 不安感や心配、身体症状が臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  3. その障害は、乱用薬物、医薬品などの物質または他の病気によるものではない。
  4. その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない。

全般性不安障害の治療方法:不安の悪循環を断ち切るために

心配事が尽きない状態では、言葉だけで治療を進めるのは困難な場合があります。過剰な不安の悪循環を断ち切り、心身の症状を和らげるために、以下の治療法が有効とされています。

薬物療法

全般性不安障害に対する薬物療法では、主に抗不安薬や抗うつ薬が用いられます。

  • 抗不安薬: 身体的な緊張や不眠は、ベンゾジアゼピン誘導体やタンドスピロンなどの抗不安薬によって速やかな改善が期待できます。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤は連用すると常用量依存を起こすことがあるため、必要最小限にとどめ、アルコールと併用しないように注意が必要です。
  • 抗うつ薬: 連鎖的に現れる不安・心配に対しては、セロトニン調節薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが用いられることもあります。効果が現れるまでに多少時間がかかりますが、持続的な症状の緩和が期待できます。

お薬によって、心身の症状をやわらげ、不安を受け止めやすい状態にすることが期待できます。症状がしっかりとなくなるまでお薬を続けることが大切です。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら快方に向かいますので、それに一喜一憂しないようにしてください。薬をしっかりと飲んで症状を抑え、ストレスと向き合うことが重要です。

精神療法(認知行動療法が有効)

お薬によって症状が緩和してきたら、認知行動療法を行うと、より有効な場合があります。認知行動療法は、あなたのものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、楽な気持ちに導く精神療法の1つです。

ストレスなどで固まって狭まった思考(認知の歪み)や行動を治療者と患者さまが一緒に確認し、患者さま自身がより現実的で幅広いとらえ方を選択できるように導き、極端な不安や落ち込みを軽くしていきます。改善に向けて段階的な目標を作成し、それを実際に行うことでより良い行動習慣を身に付け、徐々に状況の改善を図っていきます。

また、深呼吸や筋弛緩を用いたリラクセーション法や、自律訓練療法という、不安や動悸などの自律神経症状を緩和させるセルフトレーニングを併用することもあります。


尽きない不安の連鎖を断ち切り、穏やかな日々へ

全般性不安障害は、漠然とした不安が慢性的に続き、心身に様々な症状が現れる病気です。しかし、適切な治療と周囲のサポートがあれば、その尽きない不安の連鎖を断ち切り、穏やかな日々を取り戻すことが可能です。

全般性不安障害と診断されたら、「気のもちよう」ではなく「不安の病気」と受け止め、信頼できる医師のもとで根気強く治療を続けてください。症状の完全な消失がなくても、少しでも良くなったら、その分前向きに生活していく考え方が必要です。

当カウンセリングルームでは、現役の看護師であり公認心理師である私が、メンタルクリニックや医師とは異なる立場から、あなたの心の状態に寄り添い、カウンセリングを通して、尽きることない不安の根本にある考え方や行動パターンに焦点を当て、具体的な対処法を身につけるお手伝いをさせていただきます。主治医による薬物療法と並行して、あなた自身が不安をコントロールする力を育み、穏やかで自分らしい日々を取り戻すためのサポートをいたします。

一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。

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さおちる
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