2025.07.17

自律神経失調症でお悩みの方へ：身体の不調の裏に隠れた脳の疲労に気づく

saochil

「動悸や立ちくらみが頻繁に起こる…」「下痢や便秘を繰り返すのに、内科では異常なしと言われる…」「原因不明の頭痛や肩こり、手足の冷え、疲れやすさに悩まされている…」

もしあなたがこのような、全身にわたる多様な身体の不調に悩んでおり、病院の検査では特に原因が思い当たらないとしたら、それは自律神経失調症かもしれません。

自律神経失調症は、脳が受けたストレスが原因で自律神経のバランスが崩れ、内臓が円滑に機能しなくなった状態を指します。自律神経はあらゆる臓器とつながっているため、全身に様々な症状が起こるのが特徴です。

当カウンセリングルームでは、このような自律神経失調症の症状でお悩みの方が、身体のサインの裏に隠れた脳の疲労に気づき、心身のバランスを取り戻し、より健やかな日常を送れるようサポートいたします。

「自律神経失調症」とは？：ストレスによる脳疲労が原因の内臓の病気

私たちの体には、体の隅々まで網の目のように張り巡らされた「電線」のような神経があります。その司令塔は脳と脊髄からなる「中枢神経」で、そこから枝分かれして全身に張り巡らされているのが「末梢神経」です。

末梢神経は、私たちの意思でコントロールできる「体性神経（運動神経、感覚神経）」と、自分の意思ではコントロールできない「自律神経」に分けられます。自律神経は、呼吸、血液循環、消化、体温、発汗調節など、体の様々な機能の調整を24時間無意識に行い続ける、まるでライフラインのような神経です。

自律神経は、車の「アクセル」のような役割を担う「交感神経」と、「ブレーキ」のような役割を担う「副交感神経」で構成されています。

交感神経：昼間や緊張している時に活発になり、心身共にアクティブな「活動（緊張）モード」に導きます。血管が収縮して血圧が上昇、呼吸が早くなります。
副交感神経：リラックスしている時や夜間に活発になり、体を「休息（リラックス）モード」に導きます。血圧が下がり、呼吸も遅くなります。

この2つの神経は、1日のリズムに合わせて交互に活発になることで、体全体のバランスを保っています。

自律神経失調症とは、この交感神経と副交感神経のバランスが崩れて（失調して）、内臓が円滑に機能しなくなった状態を指します。自律神経失調症では主に、「交感神経が強くなる（アクセルを踏みっぱなしになる）」または「副交感神経が弱くなる（ブレーキがきかなくなる）」ため、内臓が休まらない状態が続くようになります。

自律神経失調症の原因：ストレスによる脳の疲労

自律神経失調症は、様々なストレスによって脳が疲労することで起こります。ストレスというと、人間関係や仕事のストレスなど「精神的ストレス」を思い浮かべやすいですが、体が受ける「身体的ストレス」も大きな原因になります。

身体的ストレスの例：猛暑や寒暖差、冬季の日照時間の減少、騒音、夜型生活や運動不足、時間に追われる生活など。

脳は疲れやすく、ストレスに弱い臓器です。脳の疲労は「不安」という形で現れ、不安が強くなると「神経症」という脳の病気が起こります。この時、ストレスは脳から自律神経にも伝わりますが、普段は脳と内臓のつなぎ目である自律神経がストレスを遮断し、内臓を守っています。しかし、脳の不安状態が続くと自律神経が耐えられる限界を超えてしまい、自律神経のバランスが崩れてストレスがどんどん内臓に伝わるようになり、ついには内臓にも様々な疲労症状が出ます。これが自律神経失調症です。このように、脳のストレスが強くて神経症の状態であっても、自律神経が正常に機能して臓器に影響が出ていなければ、自律神経失調症とはいえません。自律神経失調症とは、「ストレスなどによる脳疲労を原因とした内臓の病気」であり、内科（神経内科）の病気といえるでしょう。

自律神経が乱れる主な原因

自律神経のバランスが乱れるのには、様々な原因が複雑に絡み合っていると言われています。

生活のリズムの乱れ：夜更かし、夜型人間、夜間勤務、子供の頃からの不規則な生活習慣など、人体のリズムを無視した社会環境やライフスタイルが自律神経失調症を引き起こします。
過度なストレス：仕事などの社会的ストレス、人間関係、精神的ストレス、環境の変化など、過剰なストレスが蓄積すると自律神経失調症になりやすいです。
ストレスに弱い体質：子供の頃からすぐ吐く、下痢しやすい、自家中毒、環境がかわると眠れないなど、生まれつき自律神経が過敏な人もいます。また思春期や更年期、身体が弱っているときは自律神経のバランスが乱れやすくなります。
ストレスに弱い性格：ノーと言えない、感情処理が下手、気持ちの切り替えができない、人の評価を気にしすぎる、人と信頼関係を結ぶのが苦手、依存心が強いなど、ストレスへの抵抗力が弱い傾向のある人も自律神経失調症に陥りやすいタイプといえます。
環境の変化：現代の生活は適応能力が衰えやすく、社会環境の変化、人間関係や仕事などの環境の変化などへの不適応や過剰適応から自律神経失調症になる場合もあります。
女性ホルモンの影響：女性は一生を通じてホルモンのリズムが変化し続け、この変化が自律神経の働きに影響を与えます。

自律神経失調症の症状：全身に現れる多様な不調

自律神経はあらゆる臓器とつながっているため、自律神経失調症では、様々な臓器に多様な症状が出ます。特に原因が思い当たらないのに、複数の症状が出るのが特徴です。自分自身の元々弱かった臓器を中心に、複数の臓器に症状が出ることが一般的です。

身体的な症状

慢性的な疲労、だるさ、倦怠感
めまい、立ちくらみ、ふらつき
偏頭痛、頭痛、頭が重い
動悸、血圧上昇（変動）、胸が締め付けられる感じ、胸がザワザワする感じ
息苦しさ、風邪でもないのに咳がよく出る
ほてり、発汗過多（顔だけ汗をかく、手足だけ汗をかく）
手足の冷え、手足のしびれ、痛み
便秘、下痢、または便秘と下痢を繰り返す
胃の調子が悪い（お腹がすかない、胸やけなど）、吐き気
微熱
耳鳴り
口やのどの不快感、食べ物を飲み込みづらい、喉に違和感がある、呂律が回らない
頻尿、残尿感

精神的な症状

イライラ、感情の起伏が激しい、あせりを感じる
不安感、疎外感
落ち込み、やる気が出ない、ゆううつになる

これらの症状が長期にわたって続いている場合、自律神経失調症が疑われます。ただし「自律神経失調症だから」と思い込んで放置し、病気の早期発見を逃してしまうケースもあるので、注意して下さい。

あなたは大丈夫？自律神経失調症チェック

以下の項目に当てはまるか、数えてみましょう。

めまいや耳鳴りがするときが多い。または立ちくらみをよく起こす。
胸が締め付けられる感じがする。または胸がザワザワする感じが時々ある。
心臓がいきなり早くなったり、脈拍が飛ぶようなことがある。
息苦しくなるときがある。
夏でも手足が冷えるときがある。
胃の調子が悪いときが多い。（お腹がすかない・胸やけなど）
よく下痢や便秘をする。または便秘と下痢を繰り返す。
肩こりや腰痛がなかなか治らない。
手足がダルイ時が多い。
顔だけ汗をかく。または手足だけ汗をかく。
朝、起きる時に疲労を感じる。
気候の変化に弱い。
やけにまぶしく感じる時がある。
寝ても寝ても寝足りない。
怖い夢をよく見る、または金縛りにあう
風邪でもないのに咳がよく出る。
食べ物を飲み込みづらい時がある、喉に違和感がある。呂律が回らない時がある。

【チェックの結果】

0－1個：自律神経に狂いはなさそうです。
2－3個：自律神経に負担が掛かっているかもしれません。
4－6個：自律神経失調症になりかけているかもしれません。
7個以上：すぐに休養を取り、できるだけ早く専門家に相談しましょう。

自律神経失調症の4つのタイプ

自律神経失調症は、その原因や症状の現れ方によって主に4つのタイプに分けられます。

本態性自律神経失調症：
- 子供の頃からの、元々持っている体質に原因があります。自律神経の調節機能が乱れやすい体質のタイプです。
- 体力に自信がない虚弱体質の人や、低血圧の人に多く見られます。病院で検査をしても特に異常が見つかりません。日常生活のストレスもあまり関係しません。
- 体質そのものに原因があるため、食事、睡眠、運動、休息などの生活習慣を見直していくことが有効です。
神経症型自律神経失調症：
- 心理的な影響が非常に強いタイプです。自分の体調の変化に非常に敏感で、少しの精神的ストレスでも体調を崩してしまいます。
- 感受性が過敏なため、精神状態に左右されやすいタイプです。感情の移り変わりが体に症状として現れます。
心身症型自律神経失調症：
- 日常生活のストレスが主な原因です。心と体の両面に症状が現れます。自律神経失調症の中で、もっとも多いタイプです。
- 几帳面で努力家の真面目な性格の人がなりやすい傾向があります。
抑うつ型自律神経失調症：
- 心身症型自律神経失調症がさらに進行するとこのタイプになります。やる気が起きない、気分がどんより沈んでいるといった「うつ症状」が見られます。
- 肉体的にも、頭痛、微熱、だるさ、食欲がない、不眠などの症状が現れます。身体の症状の陰に精神的なうつも隠れていることが多く、病院へ行っても身体症状を改善するための対症療法しか受けられず、長い間、不快な症状に苦しむ人が多いようです。
- 几帳面な性格や、完全主義のタイプが陥りやすいとされています。

自律神経失調症の治し方・治療・対処法：3段階のアプローチ

自律神経失調症は、「①ストレスが脳内に増える → ②自律神経が失調する → ③内臓に障害が起こる」という順番で起きるため、治療も「①脳のストレスを減らす → ②自律神経をケアする → ③内臓をケアする」という3段階で進められます。

1. 脳のストレスを減らす

まずは、精神的ストレスとなっている物事から距離を置いたり、夜型生活や運動不足、時間に追われる生活のような身体的ストレスを与える生活を改めて、「スローライフ」を送ることを意識します。神経症（強い不安）には、精神安定剤などの薬が処方されることもあります。

2. 自律神経をケアする

規則正しい生活を行うことで自律神経のバランスを整えていきます。これは治療と予防法が重なるため、後述する予防法のポイントを意識しましょう。

3. 内臓をケアする

症状に応じた薬が処方されます。痛みがあれば鎮痛薬、便通異常には整腸薬、不眠であれば睡眠薬など、症状に応じた薬が処方されます。漢方薬や自律神経調整薬が用いられることもあります。

個人差がありますが、適切な生活を3カ月ほど続けることで、自律神経失調症は緩やかに改善していきます。長時間労働が原因で自律神経失調症が起きている場合には、自宅療養が必要になるケースもあります。医師の指示に従い、焦らずにゆっくり休むことが大切です。

自律神経失調症の治療法（補足）

症状・タイプなどにより、身体と心の両面に働きかける治療、生活環境を整えるなどのことを行う必要があります。体質・性格・ライフスタイルの歪みにも注目して見直し改善することが必要です。

薬物療法：
病院では患者さんの症状に合わせて、次のような薬を処方します。
- 自律神経失調製剤：自律神経の中枢に直接作用して、安定をはかる薬。原因に精神面が関与しない場合に効果的。副作用は少なめ。
- 精神安定剤（抗不安剤）：自律神経の緊張を緩和させ、不安や緊張を和らげる薬です。副作用は眠気やめまい、脱力感など。
- ビタミン剤：自律神経のバランスを整えるビタミンA、B群、C、Eを処方します。他の薬との併用が基本です。
- ホルモン剤：更年期障害の女性や卵巣を摘出して、ホルモンバランスが崩れた女性に、女性ホルモンを補充することで症状を抑えます。
- 漢方薬：黄連（精神の不安を抑え、胸のつかえや下痢などに効果）、抑肝散（イライラ、神経の高ぶり、不眠症などを抑える）、芍薬（神経の緊張を和らげ、高まった血圧や筋肉の興奮を抑制する）など。
- その他、抗うつ剤、睡眠導入剤など。
セルフコントロールによるライフスタイルの見直し：
自律訓練法などによるセルフコントロール、自己管理によるライフスタイルの見直しが重要です。
カウンセリングなどの心理療法：
心理療法や、指圧やマッサージ、整体、鍼灸、ストレッチなどの理学療法、音楽療法やアロマテラピーなど五感に働きかける治療法も併用されることがあります。
精神科・心療内科への相談：
自律神経失調症になると、なぜ様々な症状が出るのか、その原因もまた一人一人違います。神経科、心療内科などの専門医を紹介してくれるケースが多くなりました。ただし「自律神経失調症だから」と思い込んで放置し、病気の早期発見を逃してしまうケースもあるので、注意して下さい。

自律神経失調症の予防法：規則正しい生活と心のゆとり

自律神経失調症の予防法と改善法は重複しますが、基本は精神的ストレスを取り除き、夜型生活や運動不足、時間に追われる生活のような身体的ストレスを与える生活を改めて、「スローライフ」を送ることです。以下のようなポイントを意識しましょう。

メリハリのある規則正しい生活で、セロトニンを増やす：
脳の疲労を回復させ、自律神経を整えるために欠かせないホルモンがセロトニンです。セロトニンはストレスに強くなるホルモンで、朝日を浴びることで分泌が促されます。朝は決まった時間に起きて朝日を浴び、夜は決まった時間に眠りましょう。このような規則正しい生活をすることが、自律神経失調症を予防・改善する第一歩です。
昼間に「もくもく」と体を動かす：
セロトニンは、日光に当たりながらの散歩、ヨガやフラダンスなど黙々と動き続けることで分泌されるため、昼間に体を動かすことがおすすめです。考え事をせず、無心になれるような無理のない運動を続けましょう。
「わくわく」でドーパミンを増やす：
ドーパミンは大脳の前頭葉を元気にし、ストレスを力に変えられる「プラス思考」を生むホルモンです。わくわくした気持ちがドーパミンの分泌を促しますが、毎日「5000歩歩く」など、クリアできそうな小さな目標を立てて、それを達成することがおすすめです。毎日小さな達成感を味わうことが大切です。
3食決まったリズムで食べ、食材は「なまけとらんか」を意識：
睡眠と共に生活リズムを整えることに大切なのは、食事のリズムです。特に朝食は体内時計をリセットして自律神経を整えることに役立つので抜かないようにしましょう。夕食は寝る3時間前くらいまでに食べるのが理想です。
＜自律神経失調症を改善する食材のポイント＞
- 傷ついた自律神経を修復する食材：自律神経は主にビタミンB12でできており、末梢神経のダメージを回復させるにはビタミンB群が必要不可欠です。
- ストレスから自律神経を守る食材：セロトニンの元になる「トリプトファン」はタンパク質に含まれます。また、リラックスホルモンである「GABA（γ-アミノ酪酸）」を生成するグルタミンもタンパク質から生成されるため、タンパク質の豊富な食材を摂りましょう。グルタミンは熱に弱いので魚介類のお刺身や生卵もおすすめです。
- 交感神経を抑え、副交感神経を活発にしやすい食材：抗酸化力の高いビタミンEは活性酸素を取り除き、副交感神経を活発にすることをサポートします。また、カルシウムは交感神経を抑制する作用があり、発酵食品も副交感神経を活発にすることに役立ちます。
＜代表的な食材は「なまけとらんか」と覚えよう＞
これらを含む代表的な食材として「なまけとらんか」を合言葉に覚えておくとよいでしょう。
- 「な」納豆（タンパク質、発酵食品）
- 「ま」マグロ（タンパク質、ビタミンB群など）
- 「け（げ）」玄米（ビタミンB群など）
- 「と」豆腐（タンパク質、カルシウムなど）
- 「らん」卵（タンパク質、ビタミンB群など）
- 「か」かぼちゃ（ビタミンEなど）、かつお節（グルタミン酸など）
もちろんこの食材だけを摂ればよいわけではなく、タンパク質、ビタミンB群、ビタミンE、カルシウム、発酵食品を意識しながらバランスよく食べましょう。
スローライフを意識し、休息を怖がらない：
自律神経失調症は一般に頑張り過ぎる人に多く、時間に追われる忙しい生活が一因になっています。いわば現代病の1つといえるでしょう。予防・改善するには、スローライフを意識すること。「何もしないこと」も大切です。10日間ほど温泉で体を温めて療養する「湯治」にも効果があります。休暇を取るのを恐れずに、医師と相談しながら「急がば回れ」で改善していきましょう。

身体の不調の裏に隠れた脳の疲労に気づく

自律神経失調症は、身体の不調を通じて、私たちの脳が発している疲労のサインかもしれません。そのサインに耳を傾け、心と体の両方からアプローチすることで、症状の改善と健やかな日常を取り戻すことが可能です。

当カウンセリングルームでは、現役の看護師であり公認心理師である私が、メンタルクリニックや医師とは異なる立場から、あなたの心の状態に寄り添い、カウンセリングを通して、自律神経失調症の背景にあるストレスや脳の疲労のメカニズムを理解し、具体的なストレス対処法や自己管理のスキルを身につけるお手伝いをさせていただきます。主治医による身体的な治療と並行して、ご自身で心身のバランスを整え、より健やかで穏やかな生活を送るためのサポートをいたします。

一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。

ABOUT ME