アルコール依存症でお悩みの方へ:コントロールできない飲酒から抜け出し、自分らしい人生を取り戻す

「お酒を飲む量やタイミング、状況を自分でコントロールできなくなった…」「飲酒は良くないと分かっていても、どうしてもやめられない…」「家族や職場に迷惑をかけているけれど、お酒が手放せない…」
もしあなたがこのような飲酒の問題を抱えているとしたら、それはアルコール依存症かもしれません。
アルコール依存症は、単に本人の意思が弱いから起こるものではなく、脳に異常が起き、飲むことをやめられなくなる医療機関で治療が必要な病気です。アルコールは麻薬や覚せい剤と同様の依存性の薬物の一種ともいえます。
この病気は、患者さんご自身の身体や心だけでなく、家族や職場、社会生活にも深刻な悪影響を及ぼします。しかし、適切な治療と支援を受けることで、コントロールできない飲酒から抜け出し、自分らしい人生を取り戻すことが十分に可能です。一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
「アルコール依存症」とは?:お酒のコントロールを失う病気
アルコール依存症とは、お酒の飲み方(飲む量、飲むタイミング、飲む状況)を自分でコントロールできなくなった状態のことをいいます。飲むのはよくないことだとわかっていても、脳に異常が起きて飲むことをやめられなくなります。
その意味では、アルコールは麻薬や覚せい剤と同様の依存性の薬物の一種だともいえます。またアルコール依存症は患者さん本人の意思の弱さによって起きるものではなく、医療機関で治療が必要な病気であるともいえます。
アルコール依存症にかかるとお酒の飲み方のコントロールができなくなり、生活習慣や人間関係が悪化します。
アルコール依存症の症状と進行ステージ:自分では気づかないうちに忍び寄る
アルコール依存症は、習慣的に飲酒することで、自分では気づかないうちに進行していく病気です。病気の進行に伴って、飲酒に関連する健康問題や社会的問題、家庭問題は深刻さが増していきます。
習慣飲酒・依存症との境界線:こんな問題が増えていたら要注意です
アルコール依存症はより身近な病気になりつつあります。以下のような問題が増えていたら、すでに依存症との境界線にいるかもしれません。
- 健康診断でまさかの再検査
- 休肝日がつくれない
- 飲み始めたら止まらない
- 二日酔いで仕事が捗らない
- 飲酒によるブラックアウト(飲酒中の記憶がない状態)
- 酒気帯び運転で事故に
- 家事をしながら飲酒
- わかっちゃいるけど止められない
進行ステージ
アルコール依存症の進行は、大きく以下のステージに分けられます。
- ステージ1:飲酒量の増加と耐性の形成(依存症初期)
習慣的な飲酒により、アルコールに対する耐性が形成されます。飲酒を始めたころには少量のお酒で気分よく酔えていたのが、徐々に酒量が増え、酔った感じがしなくなってきます。男性に比べて女性では、アルコール依存症を発症するまでの期間が半分程度であると言われています。 - ステージ2:ブラックアウト
飲酒中の記憶が飛ぶ「ブラックアウト」を頻繁に経験するようになります。これは脳がアルコールによって正常に機能していないサインです。 - ステージ3:精神依存(依存症中期)
家庭や社会生活に影響があっても、気にすることもなく、飲酒量がいつも以上に増えたり、飲む時間や飲む場所を気にしなくなったりします。少しでも酒を口にすると自分の意思が働かなくなり、ほどよいところで止められなくなる精神的な依存が形成されます。 - ステージ4:身体依存(依存症後期)
アルコールが体内から抜けると、様々な不快な症状(離脱症状)が現れるようになります。この不快感から逃れるために、さらに酒を飲み続けるという悪循環に陥ります。
飲酒が引き起こす深刻な問題
病気が進行すると、飲酒により以下のような深刻な問題が生じます。
- 飲酒により仕事や生活が困難になります
- 家庭や社会的信頼を失います
- 食事をとらずに飲酒をつづけるようになります
- 飲酒により死の危険を指摘されるようになります
アルコール離脱症状がさらなる飲酒の原因に
アルコール依存症の患者さんでは、体内のアルコール濃度が下がってくると、様々な自律神経症状や情緒障害、手の震え、幻覚などの症状がみられるようになります。これを「離脱症状」といいます。離脱症状は起きる時期によって、早期離脱症状と後期離脱症状に分けられています。
- 早期離脱症状:飲酒を止めて数時間すると出現し、手や全身の震え、発汗(特に寝汗)、不眠、吐き気、嘔吐、血圧の上昇、不整脈、イライラ感、集中力の低下、幻覚(虫の幻など)、幻聴などがみられます。
- 後期離脱症状:飲酒を止めて2~3日で出現し、幻視(見えるはずのないものが見える)、見当識障害(自分のいる場所や時間が分からなくなる)、興奮などのほかに、発熱、発汗、震えがみられることもあります。
患者さんは、離脱症状による不快感から逃れるために、さらに酒を飲み続けることになってしまうという悪循環に陥ります。
患者さん本人ばかりでなく周囲の人も巻き込んでしまう
ところが、患者さんはこのような飲酒関連の問題が起きても、家族や周囲の人の注意や説得を聞こうとしません。これは、アルコール依存症になると、問題が起きても自分に都合よく考えて反省しなくなるためです。また、酒を飲んで幸せに暮らしている自分をとがめる周囲に反発を感じ、依存症の悪影響を否認するようになったり、自分では飲酒の問題にうすうす気づいていながら、周囲に助けを求めなくなったりします。
あなたの飲酒習慣をチェック:アルコール依存症チェックシート(AUDIT)
日本では、アルコール依存症の早期発見のチェックシートとして、数種類のスクリーニングテストが使われています。これらのテストは、アルコール依存症の疑いがある本人が回答して評価できるように作成されています。
現在、日本を含め世界では、WHO(世界保健機関)が作成した「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」というチェックシートがよく使われています。
ご家族の中にアルコール依存症の疑いのある方がいらっしゃる場合や、ご自身のアルコール依存症の可能性を確かめたい方は、テストによりチェックすることができます。
※これらは、あくまでもスクリーニングに使用するもので、診断基準ではありません。正確な診断は専門医の診察を受けることが望まれます。
アルコール依存症の治療と回復への支援:新たな人生のスタートへ
アルコール依存症は一人で治療していくことが難しいため、気になる症状があらわれたら、その症状を軽視せずに、医師に相談することが大切です。
アルコール依存症は、専門医による的確な診断と早期治療が非常に大切です。治療を確実に遵守すれば、「予期不安」そのものから、根こそぎ解消できます。事実、回復された際には、「今まで何を心配したり、苦しんだりしていたんだろう」などとお話なさる方が多数おられます。治療期間が比較的短く、治癒率が高いうえ、再発率が低いとされています。
治療のすすめと成功のカギ
アルコール依存症の治療には、様々なメリットがあります。患者さん自身やご家族、周囲の方が治療継続のために知っておくべきポイントをまとめました。
- 専門医療機関・行政機関への相談:アルコール依存症は専門医にご相談ください。最寄りの専門医療機関(病院)、行政機関(保健所、精神保健福祉センター)の検索が可能です。
- 公的医療保険と医療費助成制度:アルコール依存症の治療では、通院、入院ともに、公的医療保険や各種医療費助成制度が利用できます。
家族のためのプログラム『CRAFT(クラフト)』
家族の大きな悩みの一つは、本人が治療を頑なに拒むことです。CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)は、対立を招かずに治療を勧める方法を家族が学ぶプログラムです。
回復への道:マンガでわかる体験談
断酒に成功し、健康的な生活を取り戻した体験者の経験をマンガで分かりやすく紹介している情報もあります。
コントロールできない飲酒から抜け出し、自分らしい人生を取り戻す
アルコール依存症は、脳の異常によって飲酒をコントロールできなくなる病気であり、患者さんだけでなく、その周囲の人々にも深刻な影響を及ぼします。しかし、この病気は適切な治療と支援を受けることで、必ず回復することが可能です。
当カウンセリングルームでは、現役の看護師であり公認心理師である私が、メンタルクリニックや医師とは異なる立場から、アルコール依存症による飲酒の問題に悩むご本人やご家族に寄り添い、カウンセリングを通して、飲酒行動の背景にある思考や感情、ストレスへの対処法を見つめ直し、飲酒をコントロールするための具体的なスキルや行動計画を立てるお手伝いをさせていただきます。主治医による医療的治療と並行して、ご自身が飲酒の問題から抜け出し、より健康的で充実した自分らしい人生を送るためのサポートをいたします。
一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。