コラム

不眠症(睡眠障害)でお悩みの方へ:質の良い睡眠を取り戻し、健やかな毎日へ

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夜、なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早く目覚めてしまう…。もしあなたがこのような「眠れない」という悩みを抱えているなら、それは不眠症かもしれません。

不眠の悩みは多くの方が経験するもので、およそ5人に1人が何らかの不眠症状で悩んでいるとされています。一時的な不眠を経験する方もいれば、約1割の方が慢性的な不眠に悩むと言われています。不眠症は20~30歳代に始まり、加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加する傾向があります。また、男性よりも女性に多い悩みです。

「眠れない」という状態が続くと、日中の眠気、注意力の散漫、疲れや様々な体調不良が起こり、日常生活に大きな影響を及ぼします。しかし、適切な理解と対処法を学ぶことで、質の良い睡眠を取り戻し、健やかな毎日を送ることが可能です。


「不眠症」とは?:睡眠の質の低下と日中への影響

不眠症とは、夜、寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、その結果、日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。

不眠症の4つのタイプ

不眠症の症状は、主に以下の4つのタイプに分けられます。これらの症状は同時に複数現れることもあります。

  1. 入眠困難:
    • 床についてもなかなか眠りにつけない(30分〜1時間以上かかる)。
  2. 中途覚醒:
    • いったん眠りについても、翌朝起床するまでの間、夜中に何度も目が覚める。
  3. 早朝覚醒:
    • 希望する時刻、あるいは通常の2時間以上前に目が覚め、その後眠れない。
  4. 熟眠障害:
    • 睡眠時間は確保できていても、眠りが浅く、熟睡した感じが得られない。

不眠症を引き起こす主な原因

不眠症は、様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされます。主な原因として以下のものが挙げられます。

  1. 環境要因:
    • 時差がある場所への移動、旅行先での「枕が変わると眠れない」といった環境の変化。
    • 寝室の暑さや寒さ、騒音、明るすぎる照明など、睡眠環境が適切でない場合。
  2. 身体要因:
    • 加齢による睡眠パターンの変化。
    • 頻尿、痛み、かゆみなど、身体の不調が睡眠を妨げる場合。
    • 睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの睡眠関連疾患。
  3. 心の要因:
    • 仕事や人間関係の悩み、将来への不安、イライラなど、精神的なストレス。
    • 極度の緊張状態が続くこと。
    • 「眠らなければならない」という強いこだわりや、眠れないことへの過度な恐怖心。
    • うつ病や不安障害などの精神疾患に伴う不眠。
  4. 生活習慣要因:
    • 就寝前のアルコール、ニコチン(タバコ)、カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶など)の摂取。
    • 服用している薬の副作用。
    • 運動不足など、日中の活動量が少ないこと。
    • 不規則な生活リズム(夜勤、徹夜など)。

不眠症状の多くはストレスに伴い出現します。強いストレスを感じる出来事に遭遇すると、多くの人が数日から数週間続く一時的な不眠を経験します。そのうち、一部の人では不眠が1ヶ月以上にわたり持続します。不眠が週3日以上、3ヶ月以上持続する場合、治療が必要な不眠症の可能性があります。

ストレスが続く場合や、不適切な睡眠衛生・習慣があると不眠は慢性化しやすくなります。また、眠れないこと自体への恐怖心から、眠ろうと努力すればするほど、不眠はかえって悪化する傾向があります。


不眠症の治療と回復への支援:睡眠衛生の改善と薬物療法、そして認知行動療法

不眠症の治療は、まず不適切な睡眠衛生・習慣を見直すことから始まります。

睡眠衛生・習慣の改善

  • 寝る前の習慣の見直し: 就寝前のカフェイン、ニコチン、アルコールの摂取を控えることが重要です。
  • 床上時間の調整: 寝つきが悪い場合は、いったん寝床を離れてリラックスし、眠気が再び訪れてから寝床に戻る方法が効果的です。また、眠りが不十分であっても、決まった時刻に起床することで、翌日は体を休めようとする生理的欲求が高まり、眠りが促されます。不眠が続くようなら、寝床の上で過ごす時間を普段よりむしろ短くすることで、眠りが「濃縮」され、寝つきや眠りの維持が容易になることもあります。
  • 日中の活動量の確保: 適度な運動など、日中の活動量を増やすことで、夜間の睡眠の質が向上します。

薬物療法

上記の睡眠衛生の改善だけでは不眠が解消しない場合、医師の判断のもと、睡眠薬による治療が検討されます。睡眠薬には様々な種類があり、脳の抑制系の働きを促すもの、脳内の睡眠ホルモンの作用を助けるもの、脳の覚醒系の働きを抑えるものなどがあります。服用する際は、必ず主治医の指示に従い、決められた用法・用量を守ることが重要です。

認知行動療法:不眠症への効果的なアプローチ

欧米では、薬物療法と並行して、**不眠に対する認知行動療法(CBT-I)**が非常に効果的な非薬物療法として推奨されています。日本ではまだ医療保険が適用されず、提供できる医療施設も多くありませんが、不眠症の根本的な改善を目指す上で非常に有効なアプローチです。

認知行動療法では、不眠の原因となっている「眠り」に対する誤った考え方や、不適切な行動パターンを見つめ直し、修正していきます。例えば、「眠ろうと努力すればするほど眠れない」という悪循環を断ち切るための具体的なスキルを習得したり、睡眠に関する誤解を解消したりします。また、上で述べた睡眠衛生の改善も、認知行動療法の一部として取り組まれます。


質の良い睡眠を取り戻し、健やかな毎日へ

不眠症は、単なる「眠れない」という問題ではなく、日中の生活の質を大きく左右する重要な健康問題です。

当カウンセリングルームでは、現役の看護師であり公認心理師である私が、メンタルクリニックや医師とは異なる立場から、あなたの心の状態に寄り添い、不眠に対するカウンセリングを通して、質の良い睡眠を取り戻すためのサポートをさせていただきます。

一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。

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