コラム

「つらい気分」から抜け出す!認知行動療法で「こころ」を軽くする考え方

saochil

はじめに:つらい気分の正体を知る

なんだか気分が晴れない、些細なことでイライラしてしまう、どうして自分ばかりこんなに大変なんだろう…そう感じていませんか?

私たちの毎日は、楽しいことばかりではありません。つらい出来事やストレスに直面すると、どうしても気持ちが落ち込んでしまいます。

でも、同じような出来事があっても、人によって感じ方や落ち込み方は違いますよね。これは、出来事そのものが原因なのではなく、その出来事をどう捉えるかという「考え方(認知)」が、私たちの感情に影響しているからです。

この「考え方のクセ」に気づき、気持ちを軽くしていくための方法が、認知行動療法です。専門的なイメージがあるかもしれませんが、実は誰でも日々の生活に取り入れることができます。



認知行動療法とは?〜心のメガネをかけ替える〜

認知行動療法(CBT)は、日常生活で起きるさまざまな困りごとやストレスを整理し、考え方(認知)や行動に働きかけて、気持ちを楽にする心理療法です。

私たちの心には、物事を見るための「心のメガネ」があると想像してみてください。

このメガネが曇っていると、目の前の景色が暗く見えたり、ゆがんで見えたりします。この「曇り」こそが、あなたを苦しめている「考え方のクセ」なのです。

認知行動療法では、このメガネをきれいに磨いたり、時には別のメガネにかけ替えたりする練習をしていきます。

特に重要なのが、以下の2つの考え方です。

  • 自動思考: 出来事があったときに、パッと頭に浮かぶ考えやイメージのことです。たとえば、「上司に挨拶したのに無視された」という出来事があったとき、「きっと嫌われているんだ」と瞬間的に考えてしまうのが自動思考です。
  • スキーマ: 自動思考の背景にある、その人の価値観や信念のこと。幼少期の経験などで培われた「心の土台」のようなもので、このスキーマが自動思考に大きく影響しています。

認知行動療法は、この考え方のクセを客観的に見つめ、より柔軟な考え方を手に入れることを目指します。


「つらい気分」から抜け出す!今日からできる3つの実践法

専門家と一緒に行うのが基本ですが、まずは自分一人でも始められる簡単な方法を3つご紹介します。

1. 認知再構成法(コラム法)

これは、気分が落ち込んだときに、頭に浮かんだ「自動思考」を客観的に見つめ直す方法です。

ノートやメモ帳に以下の3つの項目を書き出してみましょう。

  1. 何が起きたか?(例:上司に挨拶を無視された)
  2. そのときの感情は?(例:不安 80%、悲しい 50%)
  3. どんな考えが浮かんだか?(例:私は嫌われている、価値がない人間だ)

最初はこれだけでも十分です。慣れてきたら、この「自動思考」を裏付ける「根拠」と、矛盾する「反証」を探してみましょう。

  • 根拠: 過去にも上司に話しかけたときにそっけない態度を取られたことがある。
  • 反証: 別の同僚は「今日は忙しそうだね」と言っていた。先日、仕事について丁寧に教えてもらった。

こうして根拠と反証を挙げることで、一つの考え方に縛られていた気持ちが、少しずつ解放されていきます。

2. 行動活性化

気分と行動は密接につながっています。「気分が落ち込む→動く気力がなくなる→ますます気分が落ち込む」という悪循環に陥っていませんか?

行動活性化は、この悪循環を断ち切るために、意識的に行動を増やす方法です。

  • 達成感を得られる行動: 簡単な料理を作る、部屋の片付けをする
  • 楽しいと感じる行動: 好きな音楽を聴く、近所を散歩する、カフェに行く

どんなに小さなことでも構いません。行動することで、気分が少しでも上向きになるきっかけを見つけられます。

3. リラクセーション法

体と心は深くつながっています。ストレスで体が緊張していると、心もリラックスできません。

体の緊張をゆるめることで、心の緊張も和らぐのがリラクセーション法です。

  • 呼吸法: 椅子に座り、お腹に手を当てて深呼吸を繰り返す
  • ストレッチ: 首や肩、背中の筋肉をゆっくりと伸ばす

まずは1日5分、寝る前などに行うことを習慣にしてみましょう。


認知行動療法を続ける上で知っておいてほしいこと

認知行動療法に取り組む中で、「自分の考え方を否定されているのでは?」と感じる方も少なくありません。完璧主義や「〜すべき」という考え方は、あなたを追い詰めることがある一方で、仕事で質の高い成果を出すなど、あなた自身の強みとして大切にしてきたものかもしれません。

でも、安心してください。認知行動療法は、あなたの性格や価値観を否定したり、変えたりするものではありません。

あなたの強みをそのままに、つらい気持ちになったときに、別の「考え方」という選択肢を使えるようになることが目的です。一つの考え方に縛られず、状況に応じて柔軟に対応する力を身につけていくための練習なのです。

焦る必要はありません。日々の練習を小さな一歩から始めて、あなた自身のペースで進めていきましょう。


さいごに:専門家への相談も選択肢の一つ

「一人で取り組むのは難しいな」「つらい気持ちがずっと続いている」と感じる場合は、一人で抱え込まず、専門家を頼ることも大切な選択肢です。

医療機関やカウンセリングルームでは、あなたの状況に合わせて、専門家が丁寧にサポートしてくれます。ご自身の心と向き合うための、安心できる場所を探してみてください。

この記事が、あなたの心が少しでも軽くなるきっかけになれば幸いです。

ABOUT ME
さおちる
さおちる
ナース
はじめまして。 現役ナースで、公認心理師の「さおちる」です。 誰にも言えない「こころの不調」を、一人で抱えていませんか? 私は12年間、看護師としてたくさんの心と体に向き合ってきました。 その経験から確信していることがあります。 それは、精神科は「こわい場所」ではなく「成長が詰まった環境」だということ。 そして、お薬を飲む前に「カウンセリングで自分と向き合う時間」が、回復への大きな力になるということです。 こころの不調は、誰にでも起こりうること。特別なことではありません。 このサイトでは、看護師と公認心理師、2つの視点から、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。 認知行動療法をベースに、具体的な予防法やケアのヒントをお伝えしていきます。 もう一人で悩まないでください。 ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。
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