コラム

【看護師・公認心理師が解説】眠れない夜に、薬の前にできること|不眠の認知行動療法が保険で受けられるようになりました

saochil

「明日も早いのに、まだ眠れていない」

「眠れないのがつらいのに、薬を飲むのはこわい」

こんな夜を過ごしている方はいませんか?

精神科で働いていると、「眠れない」という訴えを毎日聞きます。

眠れない夜のための頓用薬を希望される方も多いです。

まずはお話をうかがって、本当に薬が必要なのかを見極めるようにしています。

10月10日は世界メンタルヘルスデーです。

この記事では、眠れない夜への向き合い方と、2026年に変わった治療の選択肢をお伝えします。

1. 結論:2026年6月から、不眠の認知行動療法が保険で受けられます

不眠症の治療は、薬だけではありません。

2026年6月から、不眠症に対する認知行動療法が公的医療保険の対象になりました。

診療報酬の「認知療法・認知行動療法」の対象疾患に、不眠症が追加されたためです。

ただし、誰でも受けられるわけではありません。

対象になるのは、次のいずれかに当てはまる場合とされています。

  • うつ病や不安障害をともなう不眠症
  • 2種類以上の睡眠薬を使っても効果が不十分と医師が判断した場合

算定できるのは、1回30分を超える面接で最大8回までです。

医師が行う場合、医師と看護師が共同で行う場合、公認心理師の心理支援をともなう場合で、それぞれ点数が分かれています。

金額は実施する職種によって変わるので、受診先で確認してください。

看護師や公認心理師が実施者として点数に入ったことは、現場にとって大きな変化です。

ただ、簡単にできるようになるとは思っていません。

1回30分を超える面接を、最大8回。スタッフがよほど多い病院でないと、この時間は確保できません。

制度として認められても、実際に取り入れられる病院はそう多くないのではないか、と感じています。

2. 認知行動療法では、眠りに何をするのか

薬は眠りを助けます。

認知行動療法がさわるのは、眠りを妨げているものです。

不眠が続いている方によく起きているのが、この悪循環です。

  1. 眠れない日が続く
  2. 「今夜も眠れなかったらどうしよう」と考える
  3. 早くから寝床に入り、眠れないまま何時間も過ごす
  4. 寝床が「眠れない場所」として体に覚え込まれる
  5. さらに眠れなくなる

「眠らなければ」という気持ちそのものが、眠りを遠ざけています。

認知行動療法では、この考え方と、寝床での過ごし方の両方を変えていきます。

薬物療法より長期的な効果が高いという報告もあります。

3. 今日からできること①:寝床にいる時間を削る

意外に思われるかもしれませんが、眠れないときにやることは「寝床にいる時間を増やす」ではありません。

減らします。

睡眠制限法と呼ばれる方法です。

やり方の考え方はこうです。

  • 寝床にいた時間のうち、実際に眠れていた割合を見る
  • 8割を下回っているなら、寝床にいる時間を15分短くする
  • 9割を超えたら、15分長くする

たとえば7時間寝床にいて、眠れているのが5時間なら、割合は7割です。

この場合は寝床にいる時間を短くして、眠りを濃くしていきます。

ただし、進めるあいだは日中の眠気が強く出ることがあります。

車の運転や危険をともなう作業がある方は、自己判断で極端に削らないでください。

医師に相談しながら進めるほうが安全です。

4. 今日からできること②:眠れないまま寝床で粘らない

寝床で15分から20分たっても眠れないときは、いったん寝床を出ます。

暗めの部屋で、静かに過ごす。

眠気が来たら、また寝床に戻ります。

つらいのは、この「出る」が面倒なことです。

それでも、寝床と眠りを結び直すには効きます。

あわせて、この2つも見直してみてください。

  • 時計を見ない(何時間眠れていないかを数えるほど、頭は冴えます)
  • 寝床にスマホを持ち込まない

スマホと距離を取る方法は、「SNSを見ると疲れるのにやめられない」その理由と、無理なく距離を取る5つの方法に書きました。

5. アプリで受ける方法もあります

2026年6月から、不眠障害用のアプリ「Medcle(メドクル)」が保険で使えるようになりました。

医療機器として承認されたもので、医療機関で医師が導入します。

アプリから促される指示に9週間かけて取り組む形です。

対象は、薬物治療をしていない軽症から中等症の不眠症とされています。

2の悪循環に心当たりがあって、まだ薬を使っていない方は、選択肢として医師に聞いてみてください。

6. 「眠らなければ」の裏にあるもの

眠れない夜に浮かぶ言葉を思い出してみてください。

「明日も動けなかったら、迷惑をかける」

「7時間は眠るべきなのに」

こうした「べき」は、眠りのじゃまをします。

考え方のクセは、眠りにも出ます。

くわしくは自分を苦しめる「考え方のクセ」5つにまとめました。

7. 受診を考える目安

次の状態が週に3日以上あり、3か月以上続いているときは、治療が必要な不眠症の可能性があるとされています。

  • 寝つくのに時間がかかる
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝、早く目が覚めてしまう

あわせて、日中に眠気が出る、集中できない、気分が落ちるといった影響が出ているかどうかも目安になります。

眠れないことを、相談してよいのか迷う方がいます。

迷うときこそ、相談していい状態です。

まずはかかりつけ医や、睡眠を扱っている医療機関に相談してみてください。

なお、保険で認知行動療法を受けられるのは、1章に挙げた条件に当てはまる場合だけです。

条件から外れる方や、受診の前に一度話を聞いてほしい方は、自費のオンラインでもお受けしています。

くわしくはオンラインで不安を解消!自宅でできる認知行動療法をご覧ください。

8. まとめ

  • 2026年6月から、不眠症の認知行動療法が保険適用になった
  • 対象は、うつ病や不安障害をともなう不眠症、または睡眠薬2種類以上で効果が不十分な場合
  • 面接は1回30分超で最大8回まで
  • アプリ「Medcle」も2026年6月から。薬物治療をしていない軽症から中等症が対象
  • 認知行動療法がさわるのは、眠りを妨げているもの
  • 今日からできるのは、寝床にいる時間を削ること、眠れないまま粘らないこと
  • 週3日以上・3か月以上続いているときは相談を

眠れない夜を数えてきた時間は、あなたが頑張ってきた時間でもあります。

今夜からは、その頑張りを少し手放す方向に使ってください。

参考

ABOUT ME
さおちる
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ナース
はじめまして。 現役ナースで、公認心理師の「さおちる」です。 誰にも言えない「こころの不調」を、一人で抱えていませんか? 私は12年間、看護師としてたくさんの心と体に向き合ってきました。 お薬を飲む前に「カウンセリングで自分と向き合う時間」が、回復への大きな力になります。 こころの不調は、誰にでも起こりうること。特別なことではありません。 このサイトでは、看護師と公認心理師、2つの視点から、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。 認知行動療法をベースに、具体的な予防法やケアのヒントをお伝えしていきます。 もう一人で悩まないでください。 ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。
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