コラム

【摂食障害】過食と自己嫌悪の悪循環を断ち切る:科学的根拠に基づく認知行動療法という希望

saochil

「食事の量や食べ方をコントロールできない…」「短時間に大量に食べてしまい、後で自分を責めてしまう…」

もしあなたがこのような過食の衝動と、その後の代償行動(嘔吐や下剤乱用など)に苦しみ、心身ともに疲れ果てているとしたら、それは神経性過食症(過食症)かもしれません。

摂食障害は、体重や体型への異常なとらえ方を中心に、心と体の両方に深刻な影響が及ぶ病気です。しかし、安心してください。これは治る病気です。そして、その回復への大きなカギを握るのが、認知行動療法(CBT)というアプローチです。

この記事では、過食症の悪循環とその背景を理解し、最新の知見に基づいた認知行動療法の有効性について、看護師と公認心理師、2つの視点からお伝えします。

1. 神経性過食症が引き起こす心と体の悪循環

神経性過食症は、抑えることが困難な「食べたい」という衝動が出現し、衝動的に大量の食べ物を食べる「過食エピソード」を繰り返す精神疾患です。

この病気の患者さんは、過食による体重増加を防ぐために、嘔吐や下剤の乱用、絶食、過剰な運動といった不適切な代償行動を繰り返します。

深刻な悪循環

過食症の最大の特徴は、このコントロール不能な行動が悪循環を生み出す点にあります。

・自己評価の低下:自己評価が体型と体重の影響を過度に受けています。

・挫折感と抑うつ:過食行為に対して、患者さんは強い挫折感や後悔、自己嫌悪を抱くようになります。

・ストレスへの対処:過食は、本人にとって嫌なことを忘れさせてくれる一時的なストレス解決方法となる一方で、同時に無力感や自己嫌悪を強めます。

このようにして悪循環が生じ、引きこもりや自傷行為がみられたり、毎日の生活に支障が出たりするようになります。摂食障害の発症には、生まれつきの繊細な体質や、周囲の評価を気にしすぎるなどの心理的・社会的ストレスが複雑に絡み合っていると考えられています。

2. 回復への道:科学的根拠に基づく認知行動療法(CBT

摂食障害の治療は、体重や食事、栄養の問題だけではなく、こころとからだの両面の問題を扱う必要があります。その心理療法の中心として、摂食障害に焦点化された認知行動療法(CBT)が有効です。

認知行動療法(CBT)とは、私たちの「考え方(認知)」や「行動」のパターンに働きかけることで、心のつらさを和らげていく実践的な心理療法です。これは精神論ではなく、多くの研究で効果が証明された科学的な根拠に基づいた心のトレーニングです。

CBTでは、つらい気分が生まれる背景にある、「考え方(認知)」や「行動」のパターンに光を当て、専門家と一緒に、より楽になれる考え方や行動を具体的に見つけていくことを目指します。摂食障害のカウンセリングでは、食事や体重、体型に対する「考え方の癖」や行動パターンを見つめ直し、それらを修正していくお手伝いをします。

3. 【最新知見】オンラインCBTで過食・代償行動を大幅に減少

従来の認知行動療法は、提供可能な施設が都市部に偏在しており、専門家も少ないという問題がありました。

しかし、2025年8月に発表された最新の研究では、この問題を解決する大きな一歩が示されました。

・治療者誘導型オンライン認知行動療法(Guided ICBT)が開発され、神経性過食症の女性患者を対象とした多施設共同ランダム化比較試験(RCT)により、その有効性がアジアで初めて、また世界で2例目として実証されました。

・このオンラインCBTを受けたグループは、通常治療のみのグループに比べて、過食と代償行動(嘔吐・下剤乱用など)の合計頻度が顕著に減少し、重症度の改善が確認されました。

・さらに、この治療法は寛解率(症状が落ち着いて安定し、日常生活に支障のないレベルまで回復した状態に達した患者の割合)を有意に高める効果があることも明らかになりました。

このオンラインCBTの成功は、患者さんが病院に通う負担を軽減し、自宅で専門的な治療を受けられるという新しい選択肢を提供します。

ICBTでは、文章、写真、動画形式のセルフヘルププログラムをWeb上で利用し、治療者のガイドを受けながら取り組みます。治療者とのやり取りは、患者さんのタイミングでチャットやメールを通じて行われます。

4. 一人で抱え込まないでください

摂食障害の回復には時間を要することが多く、症状は一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。焦らず、諦めずに治療を継続することが大切です。

もし今、あなたが過食や代償行動の衝動に苦しんでいるなら、「自分が悪い」「恥ずかしい」と自分自身を責めないでください。摂食障害は、「これまでの生き方はもう無理で一人では頑張れない」という、ご自身からのメッセージかもしれません。

当カウンセリングルームでは、現役の看護師であり公認心理師である私が、メンタルクリニックや医師とは異なる立場から、あなたの心の状態に寄り添い、認知行動療法によるカウンセリングを通して、悪循環の根本にある「考え方の癖」や行動パターンを見つめ直し、修正していくお手伝いをさせていただきます。

主治医による薬物療法や身体的な治療と並行して、ご自身で心の状態をコントロールし、正常な食習慣を取り戻し、心身ともに健やかな生活を送るためのサポートをいたします。

もう一人で悩まないでください。ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。

どうぞ、お気軽にご相談ください。

ABOUT ME
さおちる
さおちる
ナース
はじめまして。 現役ナースで、公認心理師の「さおちる」です。 誰にも言えない「こころの不調」を、一人で抱えていませんか? 私は12年間、看護師としてたくさんの心と体に向き合ってきました。 その経験から確信していることがあります。 それは、精神科は「こわい場所」ではなく「成長が詰まった環境」だということ。 そして、お薬を飲む前に「カウンセリングで自分と向き合う時間」が、回復への大きな力になるということです。 こころの不調は、誰にでも起こりうること。特別なことではありません。 このサイトでは、看護師と公認心理師、2つの視点から、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。 認知行動療法をベースに、具体的な予防法やケアのヒントをお伝えしていきます。 もう一人で悩まないでください。 ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。
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