拒食・過食の苦しさから抜け出すために|認知行動療法で取り組む摂食障害の回復プロセス
摂食障害は、単なる「食べ方の問題」ではありません。その根底には、自分自身に対する評価や、体型・体重への強いこだわり、そして「こうあらねばならない」という心の葛藤が深く関わっています。
この記事では、拒食症や過食症といった摂食障害の症状を整理し、現在最も効果的とされている「認知行動療法(CBT)」を中心に、回復への具体的なステップを解説します。
1. 摂食障害の主な症状と特徴
摂食障害は、大きく分けて「拒食」と「過食」の2つの側面があります。どちらも「体重や体型が自分自身の価値のすべてである」という偏った思い込みが共通の背景にあります。
神経性やせ症(拒食症)
- 特徴: 極端な食事制限、低体重(BMIの低下)、体重増加への強い恐怖。
- 課題: 痩せていることに価値を感じてしまうため、治療に対して消極的になりやすい側面があります。低栄養状態では脳の機能も低下し、柔軟な思考が難しくなるため、まずは身体の安全(栄養回復)が最優先されます。
神経性過食症(過食症)
- 特徴: 短時間にコントロールできないほどの量を食べる「過食」と、その後の「排出行動(嘔吐や下剤の乱用)」の繰り返し。
- 診断基準: 週に1回以上の過食エピソードが3ヶ月以上続く場合。
- 心理: 過食による罪悪感や、太ることへの恐怖から排出行動に繋がるという悪循環に陥りやすくなります。
過食性障害
- 特徴: 排出行動(嘔吐など)を伴わない過食。
- 心理: ストレス対処として過食が定着している場合が多く、食習慣の正常化とストレスケアが鍵となります。
2. なぜ「悪循環」が止まらないのか?
過食症の多くは、過剰なダイエットから始まります。自分をコントロールしようとする完璧主義的な姿勢が、生物学的な限界を超えたときに「過食」として爆発します。
- 自己評価の低さを「痩せること」で補おうとする。
- 厳格な食事制限を開始。
- 空腹やストレスにより過食が発生。
- 体重増加を恐れて排出行動(嘔吐など)を行う。
- 再び自己嫌悪に陥り、さらに制限を強める……。
このサイクルを個人の「意志の力」だけで止めるのは非常に困難です。だからこそ、心理的な専門支援が必要なのです。

3. 摂食障害を治すための心理療法
現在、国内外のガイドラインで最も推奨されているのが認知行動療法(CBT)です。
強化型認知行動療法(CBT-E)
摂食障害に特化して開発されたプログラムで、全20〜40回程度のセッションを通じて以下の3段階で進めます。
- 第1段階:食行動の正常化 まずは規則正しい食事(1日3食+間食)を習慣化し、過食の衝動を物理的に抑えます。
- 第2段階:認知の歪みの修正 「痩せていなければ価値がない」といった考え方(認知)を、より現実的で柔軟なものへ整えていきます。
- 第3段階:再発予防と維持 ストレスへの対処法を身に付け、治療終了後も自分自身でコントロールできるよう準備します。
家族療法(FBT)
特に10代(思春期)の拒食症において、第一選択とされる治療法です。家族を「原因」と見なすのではなく、「回復のための最大の資源」として位置づけ、親御さんが主導して食事摂取をサポートします。
対人関係療法(IPT)
症状そのものよりも、背景にある「対人関係のストレス」に焦点を当てます。身近な人とのコミュニケーションが改善されることで、結果として過食などの症状が落ち着いていくことを目指します。
4. 回復のために大切なこと
摂食障害の治療は、数週間で終わるものではありません。良くなったり、時には後戻りしたりしながら、年単位の時間をかけて「自分自身との付き合い方」を学び直していくプロセスです。
- 「できたこと」に目を向ける: 完璧を目指さず、小さな変化を認めましょう。
- 一人で抱え込まない: 専門家(医師、公認心理師、看護師など)を味方につけ、チームで取り組むことが大切です。
- 周囲のサポート: ご家族は否定せず、本人の苦しみに寄り添う姿勢を見せてあげてください。

まとめ|一歩ずつ、健やかな自分へ
摂食障害は「心のSOS」です。症状は、あなたがこれまで一生懸命に生き抜こうとしてきた証でもあります。 認知行動療法などを通じて、少しずつ「食べることへの恐怖」を安心感に変え、体重の数値に振り回されない「あなたらしい人生」を取り戻していきましょう。
当サイトでは、摂食障害に悩む方やそのご家族に向けたカウンセリングを行っています。一人で悩まず、まずは今の気持ちをお聞かせください。
