【心の記憶庫を「全否定」していませんか?】過去の対人関係の痛みを、未来のエネルギーに変える思考の技術
私たちは誰でも、人間関係において深い喜びや、あるいは拭えない不安や悩みを抱えるものです。特に、ある人との関係が最終的に悪化してしまったとき、私たちはしばしば、その関係全体を「心の傷」として処理してしまいがちです。
記事では、関わった人々との間で、最初は良い思い出がたくさんあったにもかかわらず、後になって辛い思いをさせられた経験を振り返っています。
このような状況に陥ると、人は「最終的にその人がどうだったか」という最後の印象に強く囚われてしまいます。その結果、共に過ごした楽しかった時間まで、すべて消し去ろうとしてしまうことがあります。これは、まるで過去の楽しかった瞬間全体をネガティブな感情で上書きし、全否定する行為に他なりません。
これは「楽しかったのに」「あんなに信用していたのに」といった、「~のに」という言葉を伴う感情として、心に重くのしかかってきます。この「~のに」の思考こそが、過去の記憶に毒を与えてしまう、危険な認知のパターンです。
1. 「記憶の感情フィルター」を調整する技術
楽しかった事実まで否定してしまうことは、自分の過去を無駄にしてしまう、非常にもったいない行為です。なぜなら、結末がどうであれ、「楽しかった」という事実そのものは、確かに存在したからです。
私たちが提案したいのは、この感情的な偏りを是正するための、「出来事」とその「相手の人間性」を切り離して考えるという具体的な思考技術です。
これは、心の専門家が用いる認知行動療法(CBT)の基本的なアプローチにも通じます。CBTでは、ストレスなどで固まり狭くなってしまった「考え方(認知)のクセ」に光を当て、より楽になれる考え方を実践的に見つけ出していきます。
過去の感情を健全に「完了」させる方法
たとえ後から「あの人はひどい人だった」「許せない」といった感情が湧いたとしても、それはそれとして、「あの時は楽しかったな」という事実だけを純粋に受け止める練習をします。
この「切り離し」を実践すると、たとえ疎遠になった相手との間にも、楽しい時間が確かに存在したことに気づけます。その楽しい時間は、まぎれもなく「その人」がいたからこそ生まれたものです。
重要なのは、この楽しかった事実に対して「ありがとう」と思い、その件を感情的にそこで完結させておくことです。
2. 「全否定のループ」に陥りやすい人の傾向とケア
過去の出来事を全否定してしまう傾向は、生真面目で完璧主義、自分に厳しく、周囲に気を遣いすぎるといった気質を持つ人によく見られます。このような性格傾向は、ストレスを受けやすく、「すべて自分のせいだ」と思い詰めてしまう「認知のクセ」を生み出しやすいからです。
このネガティブな認知のクセが、不安やイライラ、不眠や倦怠感といった心身の不調の悪循環を加速させます。
過去の楽しかった時間を否定せずに受け入れることは、「~のに」という執着を手放し、「楽しかった時間はそれとして、今はもう関わりがないからそれで良い」と区切りをつけることを可能にします。
これは、自分の過去を大切にし、愛してあげることにつながります。この考え方を取り入れると、他者に対するわだまりが少しずつ消え、自分の心の器が広がるという効果が期待できるのです。
3. 心の回復力を引き出す「認知の整理」
心の不調は誰にでも起こりうることですが、「心の専門家に行くのは大げさだ」と感じたり、「自分の甘えや弱さのせいだ」と思い込んだりして、一人で苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。
しかし、心が疲れて立ち止まりたくなるのは、それだけ真剣に、誠実に毎日と向き合っている証拠です。
お薬による治療の前に、カウンセリングで自分の考え方や行動パターンを見つめ直す時間は、回復への大きな力となります。現役看護師と公認心理師の2つの視点を持つ専門家によるカウンセリングでは、心身のつながり(例えば、不安が動悸や不眠となって現れること)に目を向けながら、ストレスで固まった思考を和らげ、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。
もし、過去の痛みが今もあなたを苦しめ、理由もない不安や焦りを感じたり、朝、起き上がるのがつらいといった心のSOSを感じているなら、どうぞ一人で抱え込まないでください。
私たちは、あなたが安心して本音を話せる、安全な場所をご提供します。オンラインでの相談も可能ですので、ご自宅など安心できる場所から、ぜひお気軽にご相談ください。
