コラム

気分の浮き沈みが激しいのはなぜ?双極性障害(双極症)の症状・うつ病との違いと診断の難しさ

saochil

「最近、気分の波が激しくてしんどい」 「すごく元気な時期と、どん底に落ちる時期を繰り返している」

このような悩みを抱えている方は、もしかすると「双極性障害(双極症)」かもしれません。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在は患者さんの心理的負担や偏見を減らすため、「双極症」という呼び方も広がっています。

今回は、精神科での看護師経験と公認心理師の視点から、双極性障害の具体的な症状やうつ病との見分け方、そして治療について詳しく解説します。

1. 双極性障害(双極症)とは?

双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁(そう)状態」と、激しく落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。

単なる「性格の問題」や「気合が足りない」といったものではありません。発症頻度は100人に1人弱と言われ、決して珍しい病気ではありません。20代〜30代の若い世代で発症することが多く、男女差がほとんどないのも特徴です。

2. 躁状態とうつ状態、それぞれの症状

躁状態(または軽躁状態)の特徴

躁状態では、エネルギーに満ち溢れ、自分は何でもできるという「全能感」を抱くことがあります。

  • 睡眠欲求の減少: 眠らなくても元気いっぱいで活動できる。
  • 多弁: 一晩中しゃべり続けたり、話題が次々と飛んだりする。
  • 衝動的な行動: 高額な買い物をしたり、無謀な計画を立てたりする。
  • 易怒性: 自分の意見が通らないと、激しく怒り出す。

本人にとっては「絶好調」と感じられるため、病気の自覚(病識)を持ちにくいのがこの状態の難しいところです。

うつ状態の特徴

躁状態とは対照的に、心身のエネルギーが枯渇した状態です。

  • 強い抑うつ感: 何をしても楽しめず、絶望感に苛まれる。
  • 思考力の低下: 判断力が落ち、本を読んだりテレビを見たりすることも難しくなる。
  • 自責の念: 自分を過度に責め、価値がない人間だと思い込む。
  • 希死念慮: 「死んでしまいたい」という強い思いが出てくる。

3. 「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の違い

双極性障害には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 双極Ⅰ型障害: 日常生活に支障をきたし、入院が必要になるほどの激しい躁状態を伴うタイプ。
  • 双極Ⅱ型障害: 本人や周囲が「少し調子が良いのかな?」と思う程度の「軽躁状態」とうつ状態を繰り返すタイプ。

Ⅱ型は躁状態が目立たないため、単なる「うつ病」と診断されやすく、発見が遅れる傾向があります。

4. 【専門家の視点】診断までに時間がかかる理由

ここで、私自身の看護師・心理師としての経験からお伝えしたい大切なことがあります。

実は、双極性障害は正しい診断がつくまでに平均で4年〜10年ほどかかると言われています。なぜこれほど時間がかかるのでしょうか。

最大の理由は、「うつ病との見分けが非常に難しい」点にあります。 多くの患者さんは、気分が落ち込んだ「うつ状態」の時に病院を受診します。その時点では躁状態の記録がないため、医師も「うつ病」と診断せざるを得ないことが多いのです。

私自身、臨床の現場で「うつ病の治療を続けているけれど、なかなか良くならない」という方に多く出会ってきました。詳しくお話を伺うと、過去に数日間だけ「妙に活動的だった時期」や「ほとんど寝ずに仕事ができた時期」があったことが判明し、そこで初めて双極性障害の可能性が浮上します。

「点」ではなく「線(経過)」で見なければわからない これが、双極性障害の診断における最大の特徴であり、難しさです。そのため、ご自身やご家族が過去の「ハイテンションだった時期」を振り返り、医師に伝えることが早期発見の鍵となります。

5. 双極性障害の治療:薬物療法と生活習慣

双極性障害は、適切な治療を受けることで「寛解(症状が落ち着いた状態)」を目指せる病気です。

薬物療法

「気分安定薬(リチウムなど)」や「抗精神病薬」が中心となります。うつ病の薬である抗うつ薬は、双極性障害の人が飲むと、逆に気分が跳ね上がってしまう「躁転」や、波が激しくなる「急速交代化」を招く恐れがあるため、慎重な判断が必要です。

心理教育と生活リズム

自分の病気について知り、再発のサイン(睡眠不足やイライラなど)に早めに気づくことが大切です。特に「睡眠時間の確保」は、気分の波を安定させるための最優先事項です。

まとめ:一人で抱え込まずにご相談を

双極性障害による気分の波は、本人の努力だけでコントロールできるものではありません。放置すると、人間関係のトラブルや社会的信用の低下につながるリスクもあります。

もし「自分もそうかも?」と思い当たることがあれば、早めに専門機関を受診してください。正しい診断と治療が、あなたらしい穏やかな生活を取り戻す第一歩になります。

ABOUT ME
さおちる
さおちる
ナース
はじめまして。 現役ナースで、公認心理師の「さおちる」です。 誰にも言えない「こころの不調」を、一人で抱えていませんか? 私は12年間、看護師としてたくさんの心と体に向き合ってきました。 お薬を飲む前に「カウンセリングで自分と向き合う時間」が、回復への大きな力になります。 こころの不調は、誰にでも起こりうること。特別なことではありません。 このサイトでは、看護師と公認心理師、2つの視点から、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。 認知行動療法をベースに、具体的な予防法やケアのヒントをお伝えしていきます。 もう一人で悩まないでください。 ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。
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