コラム

ケアする人が「ケアされる側」になる時。〜現場のゆとりと、愛あるコミュニケーションが命を守る〜

saochil

1. はじめに:張り詰めた現場で闘うあなたへ

毎日、本当にお疲れ様です。人手不足、多重課題、そして「生死に関わる」という逃れられない重圧。そんな緊張の糸が張り詰めた現場で走り続けていると、つい自分の心の悲鳴を後回しにしてしまいがちです。

医療現場において「安全・安心の提供」は大前提です。しかし、今の現場で「心と体の余裕」を持ってケアに当たれている人は、一体どれくらいいるのでしょうか?私は12年の臨床経験の中で、日々現場に身を置くだけでノンストレスでいることは不可能に近いと痛感してきました。

2. 「心の安全性」がミスを防ぎ、質を高める

適度な緊張は必要ですが、度を超えたストレスは私たちの認知を曇らせます。私が現場で強く感じるのは、職場の「心理的安全性」の重要性です。

職場の風通しが良く、心の安全性が高ければ、わからないことを素直に聞き、相談やミスを隠さず伝えることができます。この「聞きやすさ」「伝えやすさ」こそが、重大な医療事故を防ぐ最後の砦になるのです。

3. 教育現場での「受け取り方」と「相互理解」

人間関係や教育の場でも、コミュニケーションの土壌が整っているかどうかで、結果は大きく変わります。

例えば、少し言い方がきつい先輩がいたとしても、日頃から信頼関係があり、その方の行動に「患者さんへの愛」が見えていれば、「あ、この先輩は厳しいけれど愛があるな」と前向きに受け取ることができます。 逆に、後輩から返事がない時も「無視されている」と捉えるのではなく、「今はパニックになっているんだな」「困っているんだな」と背景を察することができれば、フォローの手を差し伸べることができます。

教える側と教わる側、どちらか一方だけの責任にしない。 この相互の歩み寄りこそが、ハラスメントを防ぎ、誰もが育ちやすい環境を作る鍵だと私は信じています。

4. ケアリングが「重荷」に変わる瞬間

哲学者のネル・ノディングスは、ケアの本質を「専心没頭(相手を思うこと)」と述べています。しかし、責任感や倫理観が強い人ほど、ある落とし穴に陥りやすいのです。

ケアへの思いが強すぎて「心配と重荷」に変わった時、ノディングスは「ケアする人は、すでに『ケアされる人』になっている」と指摘しています。

「まだ頑張れる」と思っているその瞬間、あなたの心はすでに、誰かからのケアを必要としているサインを出しているのかもしれません。

5. ストレスコーピングは「プロのスキル」

医療現場でストレスが溜まるのは、ある意味で当たり前です。だからこそ、「うまくストレスを発散し、自分を整えること」は、立派な仕事のスキルです。

私自身、休日にうまくリフレッシュできた時と、できなかった時では、翌週の仕事への向き合い方や心の余裕が全く違うことを実感してきました。 自分に合ったストレスコーピング(対処法)を持ち、自分の状態を客観的に見てケアできることは、長く支援を続けるために不可欠な能力です。

6. おわりに:灯台も燃料が必要

誰かを照らし続ける灯台も、自分自身の燃料(心の余裕)がなければ光り続けることはできません。

「ケアする人をケアすること」は、決して甘えではありません。 あなたが心身ともに健やかで、職場の仲間と支え合えていること。それこそが、結果として患者さんへの最高のケアに繋がります。

時には自分を甘やかし、癒してあげてください。私は、ケアする皆さんが「ケアされること」を恐れず、自分自身を大切にできる未来を応援しています。

ABOUT ME
さおちる
さおちる
ナース
はじめまして。 現役ナースで、公認心理師の「さおちる」です。 誰にも言えない「こころの不調」を、一人で抱えていませんか? 私は12年間、看護師としてたくさんの心と体に向き合ってきました。 お薬を飲む前に「カウンセリングで自分と向き合う時間」が、回復への大きな力になります。 こころの不調は、誰にでも起こりうること。特別なことではありません。 このサイトでは、看護師と公認心理師、2つの視点から、あなたの「立ち直る力」を引き出すお手伝いをします。 認知行動療法をベースに、具体的な予防法やケアのヒントをお伝えしていきます。 もう一人で悩まないでください。 ここが、あなたの心を軽くする、最初のステップになることを願っています。
記事URLをコピーしました