【公認心理師が解説】自分を苦しめる「考え方のクセ」5つ
「あの人、絶対に私のこと嫌いだ」
「私がしっかりしていれば、こんなことにはならなかったのに」
こんな言葉が頭に浮かぶことはありませんか?
私自身、相手の表情から気持ちを読み取ろうとするクセがあります。
話しているときに目が合わなかっただけで、「今この人は不満なんだ」と受け取ってしまう。
だいぶマシになりましたが、疲れている日は今でも出ます。
この記事では、こころを苦しくする考え方のクセを5つ紹介します。
自分のクセに名前がつくと、対処しやすくなります。

1. 結論:クセは直さなくていい。気づくだけで弱まります
考え方のクセは、なくすものではありません。
長い時間をかけて身についたものなので、意志の力では消せません。
できるのは「また出てきたな」と気づくことだけです。
それで十分です。
気づいた時点で、その考えは事実ではなく、自分の頭に浮かんだ一つの意見になります。
この記事は考え方のクセそのものの話です。
認知行動療法という方法の全体像は、「つらい気分」から抜け出す!認知行動療法で「こころ」を軽くする考え方にまとめています。

2. こころを苦しくする5つのクセ
心理学では、こうしたパターンが10種類前後に整理されることが多いです。
カウンセリングや病棟でよく見かけるものを絞って説明します。
① べき思考
頭に浮かぶ言葉:
- 「親なんだから、我慢するべき」
- 「常識的に、これくらいできて当たり前」
- 「あの人は、こう言うべきだった」
自分にも他人にもルールを課してしまう考え方です。
このクセが手強いのは、「べき」の中身がたいてい正論だからです。
正しいので、疑う機会がありません。
「べき」が増えるほど、自分に許せることが減ります。
守れなかったときには罪悪感が残ります。
他人に向けたときは、怒りになります。
5つのうち最初にこれを挙げたのは、残りの4つの土台になっていることが多いからです。
怒りとの関係は「怒りが抑えられないのは病気?」に書いています。
② 心の読みすぎ
頭に浮かぶ言葉:
- 「今の間、絶対に呆れられた」
- 「既読がついて返事がないのは、怒っているから」
- 「あの目つき、私のことを面倒だと思っている」
相手に確かめていないのに、相手の気持ちを断定してしまう考え方です。
読み取る方向は、たいていマイナスになります。
人の表情や声の調子に気づきやすい人ほど、このクセは出やすくなります。
その敏感さについては「人間関係に疲れた…」HSP(繊細さん)の生きづらさを手放すヒントもあわせて読んでみてください。
冒頭に書いたとおり、これは私自身のクセでもあります。
相手は体調が悪かっただけ、ということもよくあります。
③ 決めつけ
頭に浮かぶ言葉:
- 「一度失敗したから、次もどうせ失敗する」
- 「前の職場もそうだった。どこに行っても同じ」
- 「男の人はみんなそう」
一つか二つの経験を、すべてに当てはめてしまう考え方です。
本人の中では、経験にもとづいた冷静な判断になっています。
だから外から指摘されても揺らぎません。
④ ぜんぶ自分のせいだと思う
頭に浮かぶ言葉:
- 「あの人の機嫌が悪いのは、私の言い方が悪かったから」
- 「うまくいかなかったのは、私が至らないせい」
自分に関係のないことまで、自分の責任として引き受けてしまう考え方です。
責任感の強い人ほど、このクセが出やすい傾向があります。
自分の責任ではないことまで抱えると、こころは消耗します。
相手の反応と自分の価値を切り離す方法は、「嫌われるのが怖い…」見捨てられ不安を克服する処方箋に書きました。
⑤ ぜんぶ相手のせいだと思う
頭に浮かぶ言葉:
- 「私はこんなに我慢しているのに、誰もわかってくれない」
- 「あの人がああしたから、私はこうなった」
④と反対に見えますが、根っこは同じです。
出来事の原因を一か所に決めて、そこから動けなくなっています。
④と⑤を行き来する人もめずらしくありません。
3. 5つに共通しているのは、視野が狭くなっていること
相談の場で感じるのは、どのクセも視野が狭くなっているときに出てくるということです。
考えの内容が間違っているというより、見えている範囲が狭い。
自分の経験だけが根拠になっていたり、ある一面しか目に入っていなかったりします。
視野は、疲れているときに真っ先に狭くなります。

寝不足の日や、余裕のない時期。
そういうときにクセが強く出るのは、性格が悪くなったからではありません。
こころが消耗しているサインです。
疲れのサインと、その対処についてはストレスとの上手な付き合い方――今日からできるセルフケア5つを参考にしてください。
4. 自分のクセを見つける方法
自分のクセは、頭の中で考えても出てきません。
気持ちが動いた場面を書き出すのがいちばん早いです。
書くのは3行だけです。
- 何があったか(例:上司にメールを送ったが、返事がなかった)
- そのとき頭に浮かんだ言葉(例:怒らせたに違いない)
- そのときの気分と強さ(例:不安 70)
1週間ぶんためると、2行目に同じ言葉が何度も出てきます。
それがあなたのクセです。
寝る前の3分でできます。
きれいに書く必要はありません。書けない日があってもかまいません。

5. 気づいたあと、どうするか
見つけたクセを、無理に打ち消そうとしないでください。
代わりに、自分に一つだけ聞いてみます。
「同じことを友人が言っていたら、私は何と返すだろう」
自分に対しては、人はいくらでも厳しくなれます。
でも友人に「一度失敗したから、あなたは次も失敗する」とは言いません。
自分にだけ厳しい基準を当てはめている、ということです。
聞いてみても答えが変わらない日もあります。
それでもかまいません。気づけたことに意味があります。
6. やってはいけない使い方が2つあります
1つ目は、無理にポジティブへ変換することです。
「次はうまくいく!」と言い聞かせるのは、認知行動療法の考え方ではありません。
目指すのは前向きになることではなく、現実的になることです。
「失敗したのは事実。ただ、次も失敗すると決まったわけではない」
このくらいで十分です。
2つ目は、自分を責める道具にすることです。
「またべき思考が出た。私はダメだ」
これでは、責める材料が一つ増えただけになります。
気づくことと、責めることは違います。
7. 2週間以上続くときは、相談を考えてください
考え方のクセに気づいても、気分が晴れないことがあります。
次のような状態が2週間以上続いているときは、セルフケアだけで抱えないでください。
- 眠れない、または朝早く目が覚める
- 食欲が落ちた、または止まらない
- 好きだったことに興味がわかない
- 仕事や家事が手につかない
- 「自分には価値がない」という考えが離れない
性格の問題ではなく、治療で楽になる可能性があります。
相談していいのか迷う方がいます。
迷うときこそ、相談していい状態です。
考え方のクセを整理する認知行動療法は、オンラインでも受けられます。
くわしくはオンラインで不安を解消!自宅でできる認知行動療法をご覧ください。
8. まとめ
- 考え方のクセは、なくすものではなく、気づくもの
- こころを苦しくするクセは、べき思考/心の読みすぎ/決めつけ/ぜんぶ自分のせい/ぜんぶ相手のせいの5つ
- 最初に見てほしいのは「べき思考」。残りの4つの土台になりやすい
- どのクセも、視野が狭くなっているサイン。疲れているときほど強く出る
- 見つけ方は、出来事・浮かんだ言葉・気分の3行を1週間
- 気づいたら「友人が同じことを言っていたら?」と聞いてみる
- ポジティブに変換しない。自分を責める道具にしない
- 2週間以上つらさが続くときは相談を
考え方のクセに気づける人は、自分を見つめる力がある人です。
その力を、自分を責めるためではなく、自分を助けるために使ってください。
